大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(う)1178号 判決

所論は,被告人が本件覚せい剤の単純所持の罪で起訴された昭和58年4月18日以後の取調べにより作成された司法警察員,検察官に対する各供述調書は,被告人の起訴後における当事者たる地位に鑑み起訴後の取調べは許されないとの法理を無視した捜査当局の違法な取調べにより作成されたもので,右各供述調書には証拠能力がなく,かかる供述調書を挙示引用して本件覚せい剤の営利目的所持を認定した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違背がある,というのである。

しかしながら,被告人が営利の目的をもって本件覚せい剤を所持したとの原認定が,所論指摘の前記被告人の司法警察員,検察官に対する各供述調書を除くその余の関係証拠によって,肯認し得ることは前述したとおりであるから,仮に,原判決の訴訟手続に所論のごとき法令違背があったとしても,右法令違反は判決に影響を及ぼすものとは認められないのみならず,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討してみると,たしかに,所論指摘の被告人の司法警察員,検察官に対する前記各供述調書は,いずれも,被告人が同年4月18日本件覚せい剤のいわゆる単純所持の罪で起訴された後の取調べに基づき作成されたものではあるが,本件の場合は,いずれも第1回公判前の取調べであり,その取調べによって原審公判手続の進行に支障を生じたとか,被告人の防禦権が侵害されたとかの事実はなく,また,本件は,被告人が営利の目的で覚せい剤約940グラムを所持した事案ではあるが,現実にはこれが被告人から清野に渡されており,被告人が起訴前に捜査官に対して述べる覚せい剤の入手経路取引の相手方についても確たる裏付けもとれていなかった事案であって,捜査官の取調べが現に起訴されている被告人の関係のみならず清野ら本件に関与した第三者のための捜査としての性格を有していたこと,被告人は自ら本件についての事情を検察官に述べる旨取調べを担当した警察官長田光雄に上申していることが認められ,これらによれば所論指摘の被告人の前記各供述調書を証拠採用したうえ被告人に対し本件覚せい剤の営利目的所持を認定した原判決の訴訟手続には,違法のかどはなく(最高裁・昭和53年9月4日第二小法廷決定,刑集32巻6号1077頁参照),この点の論旨も理由がない。

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